データ移行の話
「今日の幸福値は30。理想値を大幅に下回っています」
今日の検診は終了だ。
ピピッと機械音が鳴り、出口へ向かうと扉が開く。
その向こうで出迎えたのは、|母《M-020》だ。
「やはり、シハノの定期投与の方が格段に幸福値が安定します。試行回数はすでに100回に到達。これ以上の検証は不要と判断します」
|医者《D-025》の音声がそう告げた。
不要?
僕も、データだけになっちゃうの?
それは、優れた技術で、良いことと教わったのに。
どうしようもなく、心の底が冷たくなった。
心臓が暴れ始めると、警告音が真っ白な部屋に鳴り響く。
母が僕を宥めようと頭を撫でる。
それでも、冷や汗が止まらない。
「検証期間まで後7日あります。No.00100本日も幸福であることを目指しましょう」
|母《M-020》は僕にそう告げた。口端を上げ、目元を細める。
優しい笑顔、安心するはずの笑顔。
そう、|習った《インストールされた》。
なのに、なぜか、それは違うような気がしていた。
でも、この違和感の理由は誰も教えてはくれなかった。
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タイトル:僕のタスクは、こうふくになること。