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美麗な少女

ショーウィンドウに飾られている『美麗な少女』の人形がある。

 髪の毛一本一本が瑠璃色にすき通っている。陶器のような冷たささえ感じる肌に、全てを見透かすような瞳を持っていた。彼女を引き立てるためなのか、紺色のドレスには最低限の装飾しか施されていない。フリルすらなく足元に向けてふんわりと広がっていて、裾に向けて色が薄くなっている。よく見ると、境界線がわからないほどに薄い布が使われている。

「話聞いてた?」

 梨子は隣にいる結城の顔を見て、誤魔化すように笑う。

「ごめん見惚れちゃってて、聞いてなかったかも」
「気持ちはわかるけど、折角ならさ。この子の本質を理解しないと」
「本質?」
「この子は名のある人形作家の作品の一つでーー」

 物知りな結城は、梨子にその人形の歴史を語り始める。
 梨子はその手の話には疎かったから、結城の語る技術の凄さ、歴史的な背景、作家の苦悩は、ぼんやりとしか頭に入ってこなかった。

「綺麗だと思う」

 最後に梨子が持った感想はたったの一言だった。結城はどこか寂しそうに笑っていた。
 後ろ髪引かれるような思いで二人はその場を離れる。
 少し歩いたところで、梨子は振り返る。

 心なしか、遠くに見えた人形の表情が和らいだように梨子には感じた。