プロローグ
瞼の裏に光をみた。目を開くも、そこには太陽も窓もない。
あるのは壁一面に詰め込まれた本と、自分が横たわっていたソファだけ。
本が宙を舞い、小鳥のようにページをはためかせている。一冊の本がぐるりと宙返りをし、奥の部屋へと消えていった。
微かに開いた扉の奥から静かな靴音が聞こえてくる。姿を表したのは、白いスーツに身を包んだ彼だった。
一つにまとめられた長い髪は、歩くたびに微かに揺れる。
背後に見える大きく白い翼は畳み込まれており、揺れるたびに弱い風が流れていた。
光を纏うような彼は私の目の前で立ち止まった。透き通る白い瞳に自分の影が写り込む。
微笑を浮かべ、彼は言葉を紡いだ。
「とある、雪の日の話をしよう」
二冊の本が私の周りをめぐり、ページが捲る音が耳に入り込む。
淡い光に包み込まれたその刹那、焼けるような痛みと共に、冷気が肌を刺した。
呼吸が乱れ、嗚咽が溢れる。翼が、もげてしまいそうだ。
視界が白に染め上げられ、鉄臭い匂いが鼻をつく。
自分の輪郭が溶けていくようだ。視界を影が包み込む。
でも、違う。
私は——。
ユキではない。